庭や野菜を手作りしたいと考える人が、急速に増えているようです。検索してこのマイガーデンにお越しの方も増えてきました。でも、ネットは部分的な情報を拡大して見るのは得意でも、一貫した方法や考え方のもとで時間をかけながら、何かを作ったり学んだりするのはあまり適さないようです。そういうときは「はやり本だ!」というわけで、PUTONが読んで役立った、あるいは感心した本をご紹介するテーマを設けました。
渋谷のギャルが農業の世界へまっしぐら。思ったが最後、田んぼめがけて一直線。その思いの真っ直ぐさと純情さは、読んでいてほれぼれするほど。その印象が強いせいか、農業本というより自己啓発本のような読後感を覚えました。
このチャレンジ精神あふれるノギャルの行動にたいし、実際に農業に従事されている方を中心に、ギャルに農業などできるか、という多くの批判が寄せられているようです。本気で農業をするならツメを切れ、ケバい化粧とファッションは止めてくれ、月に二日田んぼに来て農業などと言わないでほしい、などなど。
しかし、本書にも繰り返し書かれているように、著者の目的は農家の一員になることではなく、「若者に食や農業に興味を持つキッカケ」を作ることです。人と社会のつながりや仕組みの、うまく機能していないところを掘り起こし、問題を解消しようとする取り組みです。ですから、農業やるなら首まで浸かれというのは当たらないんじゃないかなあ・・・。
著者が一途になって取り組んでいるこの活動は、ビジネスの仕掛人の仕事と重なるところが多いように思います。その意味では、彼女が最初に取り組んだ「ギャルマーケッティング」の発展系といえそうです。共通しているのは、この人が徹底した体験派だというところ。「ギャル革命」のときはギャル社長、「ギャル農業」ではノギャル。そのどちらもが我が身を課題の対象のなかに位置づけての活動です。
自給率の低さや耕作放棄地の問題、農業従事者の高齢化や跡継ぎの減少を話題にするマーケッターは多くいますが、体験から仕組みを考えるという取り組みは少ないと思います。取り組みが稚拙といわれても、本業ではない負い目はあろうとも、24歳の体験派マーケッターに声援を送らないわけにはいきません。
ガンバレ「ノギャル」!
都心から1時間の場所で、等身大の都会&田舎ぐらしをするようになって4年という、もと造園会社勤務の女性の手による、すばらしい本です。
野菜の栽培や庭作り、あるいは手作り野菜を使った料理の本など、このところ園芸関係を中心に庭関連の本が数多く出版されています。しかし、この本ほどそれらの要素をまんべんなく網羅し、広い視点で暮らしそのものを描いた本は、そうそうないのではないでしょうか。
それだけではありません。著者の視点は近隣・地域にまでおよび、房総の農家の方々への敬意までもが込められています。すごいですねえ、ほんとうに。章立てはつぎのようになっています。
Chapter.1 トカイナカ暮らしの日常茶飯
Chapter.2 畑庭の四季
Chapter.3 収穫したもので簡単Cooking
Chapter.4 房総の農家に学ぶ
Chapter.5 畑庭日々徒然日記
トカイナカという題名やかわいいイラストから、表紙を見ただけでは見過ごしそうですが、読んでみてかなり科学的というか論理的な本だなと思いました。例えば第二章など、設計、イメージ、購入、行動と、きちんと段階を踏んで記述されていて合理的です。種袋の裏にある播種カレンダーを見ながらあれこれと袋を並び替えたり、「植物って地上部分がどうしても気になるが、やはり地面の下がその骨格なんだ」と綴る著者の頭の中は、きっと科学脳なのに違いありません(^^)。
庭や野菜を相手にするとき、私などとかく感覚的で適当になりがちですが、自然や生き物にも合理的な摂理があること、その法則を見つけて生かすことが、ほんとうのコツなのだと改めて思いました。
ところでこの本、家に届いてしばらくしてハプニングがありました。
「あら、これって、トナカイじゃなかったのね! なんでトナカイの本に麦わら帽子が書いているのかと、ず〜っと思ってた。」
ですって(^^;)/。面白かったので友人に話したら「いや、ぼくも最初、トナカイかと思った」と返され、また二人で大笑いしました(笑)。
サンデーファーマーとして米を作り、庭で野菜を作るようになったせいか、このごろ自給には二つの視点があると思うようになりました。
よく話題になる自給率40%の日本を起点に、国や世界との関連で見る外向きの自給と、自分の生活や身体感覚で捕らえる内側に向う自給の二つの視点です。そんな気持ちでいたところ、たまたまこの本を読みずいぶん勉強になりました。
何より驚いたのは、自給率40%のなかには、10アールで年間1,200kg程度の収穫がある私たちのお米は入っていなかったことです(^^;)。1990年以降、「耕地30アール以下、または年間農産物販売額50万円以下の農家」は自給的農家として「統計上はもちろんのこと、政策の対象から外した」とあります。
ところが、その一方で自給的農家は年々増えつづけ、農産物直売所を生み出すに至り、その売上高は推計で6,000億円超えるという下りにまたビックリ。これって、こちらの記述と読み合わせると、2006年の国産農作物の出荷額10兆2,000億円の6%近くにもなります。なんでこれが自給率に反映されないのか不思議です。
もう一点、米や野菜を作ることには、数字では表現できない大切な価値があると思います。それは、自給をすることで、育てること食べることにとどまらず、天候に敏感になり、昆虫に愛着がわき、自然や生き物を畏怖するような気持ちになることと関係がありそうです。たんに私が年を取っただけかもしれませんが(笑)。
「牛乳を配達する人間はこれを飲む人間より健康である」
本のなかで引用されているこの諺は、まさに人間の内側に向う自給の効用を象徴する言葉ではないかと思いました。「自給って、ナニ?」と、ちょっとでも疑問の方にはお勧めの一冊です。
奥付には7月6日発行と記載されていますが、今日すでに、店頭に並んでいました。
「お金をかけずに、目を肥やしましょう」「この本を片手にスーパーへ行こう!」「「おいしさ鮮度」がひと目でわかる天才シェフの目利き」と、帯に書かれたコピーを見るだけで食指が動きそうなお役立ち本です。実際、私も、二行のコピーにそそられて書店に走った一人です(笑)。
構成もよく考えられています。野菜、果物、魚介、肉、ぜんぶで111種の食材が、◯(良い)×(悪い)の二枚の写真で評価されていて、とてもシンプルです。しかも、携帯を前提としたコンパクトサイズ。厚さは8mm、重さ135gと、これだと確かにかさばりません。
さっそく、庭で採れた野菜にこの本の評価を当てはめてみました。ひとつは、今朝収穫したばかりのオクラ。もうひとつは、先日収穫を終えたジャガイモです。本の記述は以下のとおり。
・オクラ
「◯ 切り口が変色していない」
「× 全体的に黒ずんでいる」
・ジャガイモ
「◯ 表面がなめらか」
「× 穴が多いと、芽も多い」
庭で採れたものは写真のとおりです。まあ、オクラは今朝採ったばかりだから、当然かな。ジャガイモは、穴が少ないからこれでいいのかなという感じ。
それにしても、こういう本が出ると生産者もスーパーもたいへんかもしれません。食品の25%前後が廃棄されている現状を改めるには、ユーザーが賞味期限の近いものから買えばいいという提案を見たことがあります。同じ見方に立つと、「食材スーパーハンドブック」のような本といっしょに、ちょっと古くなった野菜の活用法という本があってもいいのかなと思いました。まあ、その前に、旬の野菜は自分で作るってことですかね。
この本、このところ「アマゾンで売れ行きNo.1」という宣伝がよく目につきます。図鑑が売れ行きNo.1? これでは市場は冷えるわけだ(笑)。
広告を見つけたのは妻でした。「牧野の植物図鑑、たいへんだもの」とはぜいたくな話し。でも、手にしてみると、確かに便利ですね。この本を片手に散歩に出れば、かなりの植物が特定できそうです。庭の花コーナに掲載したネジバナ(写真右)も、この図鑑で特定することができました。
この本、図鑑と銘打っていますが、巻末に植物を気軽にスケッチするための「植物画入門」のページがあります。その記述が面白い。
「肉眼での観察や描写には限度がある。(中略)きちんと描くこと。場合によっては、ピンセットで分解し、ルーペで拡大してスケッチしてみるといい。」
こういう文章を読むと、スケッチをすることとカメラで撮ることとは、まるで作法が違うな、ということは、捕らえているものも違うんだなと知らされます。それとも、カメラの達人は、密かにピンセットとルーペを持ち歩いているのだろうか。
という具合に、頭のなかも、勝手にお散歩できる楽しみ深い一冊です(^^;)。
今回は関連する二冊をまとめてご紹介します。はからずも、カバーの表紙もどこか似ていますね。
●「いのちをはぐくむ農と食」小泉武夫、岩波ジュニア新書
小泉武夫さんといえば、「味覚人飛行物体」「発酵仮面」と呼ばれるほど、日本全国津々浦々の食べものを胃袋に納めてきた、感嘆すべき食の探求者です。この本はその著者が、崖っぷちに立つ日本の食料事情にいても立ってもいられず、若い人に農業と食の大切さを少しでもわかってほしいとの思いで、小学生から高校生向けに書き下ろした一冊です。
毎年全国で医者(歯科医師を含む)になる人(約6,300人)よりも、農業に従事する人(5,000人未満)が少ない現状を嘆き、食料を外国に委ねる危険性を指摘し、それならばいかにすれば農業を活性化できるかと取り組みをはじめ、地産地消と食育に問題解決の原点を求める本書は、問題の指摘と分析に止まらず、実体験と具体的な活動を盛り込んだ実学の書といえそうです。しかも、その語り口は平易です。
人にとって食べることは死ぬまで「実」の行いです。なのに、食べ物はいつのまにか実を離れ、経済、金融、外交といった、ともすれば虚に染まりがちな事情のなかで歪められてきました。この歪みをただすには、ひとりひとりが食料生産の実際を知り、毎日の食事を見直す必要があるとする著者の意見に、私も同感です。
●「医者いらずの 食べ物事典」石原結實、PHP文庫
事典とあるとおり、野菜だけでなく魚介もふくめて全部で114の食材について、病気にたいする効能の観点でまとめあげた、帯に曰く「家庭に一冊の保存版」です。このような本では悪役になりがちな牛肉、豚肉、鶏肉についてはどうでしょうか。
「肉類は、家康や明治の人のごとく、「薬食い」的に時々食べるのが人間の体には適していて、時々食べれば薬のように体に効くといえそうです。」
と、悪役扱いではなく、用い方次第で薬になると説いています。冒頭の「日本人の食品摂取量の推移」(写真右)見ると、この50年間で日本人の食生活がいかに激変してきたかが一目瞭然です。少なくても食に関して、すでに日本人はいない、といっても過言ではない状況です。米の摂取量は半減し、肉類と乳製品が約9〜19倍の摂取量になったということは、上の引用を悪用すれば、現代人の食環境はすでに「薬浸け」状態!?
今夜の夕飯はと妻に尋ねると、「庭のダイコンと冷凍サンマ」とのご託宣。さっそく事典をひもとくと、ダイコンには魚肉の解毒や、解毒の人体への作用か二日酔い防止に効くとあります。サンマは夏バテ解消。「じゃあ、ビールだね!」では効能も相殺かな(笑)。
今月(5月)に出版されたばかりの新刊です。さっそく、昨日採ったばかりのジャガイモと合わせてご紹介します。
つい先日、BRUTUS2月号の「みんなで農業。」が出たと思ったら、こんどは建築界からの新刊。ブルータスが「農業」という大枠なら、こちらはより身近な「まち」での自給自足がテーマです。生産の視点に立った食の話題が、ほんとうに増えてきましたね。
この本、タイトルに違わず、「10平方メートル」の農地でどれだけの食料が自給できるか、10種類の作物を例に具体的な収量(期待値)が記されています。白菜なら18個、ダイコンなら20本、米なら21食といった具合です。
このような数値をもとに、年間10種類の作物を各1平米で平均3ヶ月で収穫すればと試算していくと、家庭の食材の自給率がもっとリアルにイメージできるなあ・・・などと想像がふくらみました。もっとも、農林水産省の統計から作ったというこの収量、かなり控えめなように思いますが・・・・。
ついでに宣伝を。本の後半にクッキンガーデンがドーンと取り上げられています。その写真の風景、このマイガーデンのコーナのそこかしこで見たような(笑)。
数ある同種のノウハウ本のなかで、わたしがいちばんお世話になっているのがこの本です。
書かれている内容と自分の菜園との相性はどこにあるんでしょうね。もともとの土地の性質、気象条件、地域性などさまざまな要素が関係するのでしょう。書いてある通りにしているのに、うまく育たない経験をお持ちの方も多いと思います。私も、過去に何種類ものノウハウ本を買いましたが、なかなかこれというものに出会えませんでした。
しかし、この“上岡流”に出会ってから、野菜の出来がずいぶん安定したように思います。いまでは、とりあえずこの本で作り方をチェックしておかないと、どこか不安になるほどです。
また、同じ参考書をよりどころにしておくと、本にない野菜に取り組んだり、時期が異なるときに応用が利きやすい利点がるような気がします。つまり、参考書が一定だと一貫性が保たれやすく、応用が利くというわけです。
なお、わたしは、肥料はこの本に記載されているものを使っていません。いちおう、チッソ、リン酸、カリの比率を参考にして、手に入れやすい類似品を使っていますが、おおきな問題はないのではないかと思っています。
先に掲載した大橋明子さんの「うきうきキッチンガーデン」に、二冊の本が紹介してあります。「植物は気づいている」と「植物の神秘生活」です。今回は前者をとりあげます。
大橋さんがコラムのタイトルに「植物は人の思いに反応する!?」(前掲書、大橋、p49)と書いているように、「植物は気づいている」は、植物には何かしらの知覚力があり、世話をする人との間で情報伝達をしていることを、まことに根気づよく証明しようとした労作です。
その証明方法の中心となるのが、1950年ごろアメリカで犯罪捜査に多用されていた嘘発見機です。著者のクリーブ・バクスターは、元CIAの尋問官として嘘発見機(ポリグラフ)に関わるようになり、ポリグラフ検査官の養成学校の経営者として腕をふるうようになります。しかし、42歳のとき(1966年)思いつきで観葉植物に嘘発見機を装着したことで、その後の人生が一変することになりました。
「植物は気づいている」はその経緯にはじまり、著者がいかにして「植物に意識がある」ことを証明しようとしたか、そして、その主張と発見がいかに多くの非難にさらされてきたかを記した労作です。それから40年以上が経過した現在も著者の主張は、少なくとも頭皮のマッサージがハゲ防止に効くという程度には認められていません。植物にかかわればかかわるほど、バクスターの指摘に納得できるようになる自分からすると、この本は、たんに内容が興味深いだけでなく、悲劇の書のようにも思えます。
なお、関連する本として「嘘発見機よ永遠なれ」という大冊があります。こちらは、嘘発見機を通してみるアメリカの国民性のような趣があり、これはこれでたいへん面白い内容です。
記念すべき「庭の図書館」コーナ第一号です。この本を買ったのは、出版されて間もない昨年の10月。どんな感想を持ったかって?
いや〜、面白さに拍手したくなりました。その文体、視点、イラストの味わい。ズッコケながら「野菜作りはこんなに楽しい!!」と、再発見をもたらしてくれた記念すべき本です。
本を読み終わり、このヒト、一体どんなヒト? そう思って訪れた著者のブログ「イラストレータ大橋明子のブログ」を開いて唖然。え、このお方が、あのネギ頭のヒト!? う〜ん、ギャップに頭がクラクラするのは私だけ?
この本を読んだら、ぜったいに野菜を見て「ラブリ〜」なんて言葉が浮かんでくると思う。失敗してもへっちゃらだと楽観の海に漕ぎだしたような気分になると思う。99.9%のヒトは、ぜったいに。え、そうでもない? そんな0.1%のアナタには、ゴメンナサイ(^^;)/。
あの、念のためですが、この「うきうきキッチンガーデン」はマンガ本ではありません(笑)。ラブリーなページの写真のせいで誤解されませんよう。