庭を手作りしようとして、いちばんの原動力になるものは何でしょう? それはなんといっても完成後のイメージです。作り上げたものによってどんな楽しみが得られるか、そのイメージが強く明確であればあるほど、苦難は耐えられるというもの。まさに、幻想あっての現実というわけです。
しかし、その幻想として私が思い描いたのは、楽しいパーティーではなく、豊かに実った菜園でもありませんでした。そうした個々の楽しみを思わなくもありませんでしたが、なぜか、スタイリッシュな庭、カッコイイ庭を作りたいという思いが強くありました。何と抽象的な幻想でしょう(笑)。
当時、「スタイリッシュな庭」というテーマで本やインターネットを調べてみてもほとんど情報はなく、専門家に聞いてみたものの、これといった答えはもらえませんでした。即物的な楽しみではなく、なぜこんな抽象的な思いにかられたか、これはいまだになぞです。
ともかく、そんな動機に支えられて庭作りがスタートしたのですが、すぐに切実な問題に直面しました。
「ねえ、あなた。スタイリッシュとかもいいけれど、庭にできる水溜まり、何とかならないかしら?」
「スタイリッシュな水溜まり、ってどう?」
「・・・だ〜め!」
こうして、幻想は萎え、現実の問題が姿を現したのでした。